社説

強制不妊手術問題 救済の動き加速に期待

 旧優生保護法の下で障害者らに不妊手術が繰り返されていた問題で、救済策を検討している自民、公明の与党ワーキングチーム(WT)は、全国被害弁護団と25日に初めて面会する。

 この問題では、1948~96年に「不良な子孫の出生防止」を掲げた旧法の下で知的障害などを理由に約2万5千人が手術を受け、うち約1万6500人は本人同意のない強制だったとされる。仙台、東京、神戸、熊本地裁などで国家賠償請求訴訟が起きている。

 本県では、県の独自調査と国の依頼に基づく調査で、優生手術を受けた件数として151人分が確認されている。国の統計では、県内で行われたとされる同意なしの不妊手術は445人を数える。

 全国の弁護団は9月に出した声明で、手術を受けたことを示す個人記録が残っていない当事者も多いことから、「被害実態を十分調査し、救済されるべき被害者を排除しない制度設計を」などと訴えており、与党WTとの面会でそうした考えを直接伝えるとみられる。

 与党WTは救済の対象者などについて年内に基本方針をまとめる構えで、当事者側の意見を聞くことで調整を進め、原告側に受け入れてもらえる救済内容を探る意向もあるようだ。対立を避け救済に動きつつあることは評価したい。

 また、超党派議員連盟の救済案作成プロジェクトチーム(PT)も検討を重ねており、今月開いた会合で、被害救済策の大枠を固めた。本人が手術に同意したケースや手術記録がない事例も幅広く対象とし、おわびや反省の言葉を関連法案に盛り込む考えで、与党WTとも連携して具体的な内容などを詰める方針だ。

 「障害者差別に当たる」として旧法から「優生手術」の条文が削除されてから22年。非人道的な政策で子どもを産み育てる権利を奪われた当事者たちは、今は高齢になっている。救済の動きを加速させ、連携して実効性のある被害認定の仕組みを作ってほしい。

 この問題では障害者団体にも動きがある。例えば、知的障害者の家族らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」は、被害実態の把握に向けて10月以降、各都道府県の育成会に相談窓口を設置する方針だ。また、会として旧法の問題にどう関わってきたか、歴史的な経緯の検証も行うことにしている。

 一方、同問題では、旧厚生省が86年の時点で「人道的に問題」として法改正を検討し、88年には強制手術を廃止する「試論」も作成していたことが先月、厚生労働省が公表した資料で明らかになった。差別的条項が削除された96年の法改正の10年前から所管の旧厚生省内で法の見直しが提案されていたにもかかわらず、すぐには改正せず、その後も不妊手術が行われていた現実がある。

 なぜ10年間も法改正されなかったのか。賠償責任を避けるためだったのか。それを含め、国が国策の過ちをきちっと認めることなしに旧法問題の解決は見込めないだろう。国は一連の経緯をつぶさに検証し、責任の所在を明確にするなど誤りを総括する必要がある。

 そして、差別的な優生思想に傾かない姿勢も改めて確認したい。

(2018/10/19付)
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