社説

税制改正大綱 財政健全化は進むのか

 2019年度政府予算編成は、麻生太郎財務相と関係閣僚による折衝が行われ、21日の閣議決定に向けて大詰めを迎えているが、これを前に与党が決定した税制改正大綱は、自動車や住宅関連の減税を中心に、来年10月の消費税増税による景気減速を防ぐ対策に力点を置いた内容になった。

 前回、税率を引き上げた14年は、家計負担の増大によって消費が冷え込み、深刻な景気減速を招いた。こうした事態を回避するために、一定程度、負担を軽減する必要はあるだろう。

 しかし、消費税対策にはこのほか、飲食料品などを対象に導入が決まっている軽減税率や、歳出面で手当てするキャッシュレス決済でのポイント還元、プレミアム付き商品券などもある。これらを合わせると、増税による歳入増効果を相殺しかねない規模になる。果たして財政健全化は進むのか。

 日本経済は現在、緩やかな成長が続いているが、米中の「貿易戦争」激化や英国の欧州連合(EU)離脱問題などによって世界経済は不安定化している。そんな中で、14年の二の舞いは回避したいというのが政府の狙いなのだろう。

 景気の腰折れを防ぐことは重要だが、必要以上の対策を漫然と続ける余裕は日本にはない。一連の対策は、消費税増税実施前後の景気動向を点検し、必要性が減じたと判断できる場合は、規定された政策実施期間内であっても、縮小や停止を検討することも視野に入れるべきだ。

 政府は今回、家計負担を軽減することで消費税増税の円滑化を図ろうとしている。だが、軽減策が税制を複雑にさせ、納税者にとって分かりにくく混乱を招くような事態になれば、健全な財政運営とは言えないだろう。

 負担を軽減するばかりではなく、なぜその負担が必要なのか理解を求める努力が今後、さらに重要になるであろう。財政赤字の規模、社会保障政策の現状、見通し、負担が将来世代に先送りされる構造などのデータを分かりやすく示した上で、議論を深める作業を進めたい。

 日銀の大規模緩和による低金利が続く金融市場の動向と財政運営の関係などについても、財政当局は情報発信をさらに強化する必要がある。研究者の間で見解が異なる問題も多いが、それも含めて議論のたたき台にしたい。政府、政治の側が身を律することが理解を得る前提になることは言うまでもない。

 今回、負担軽減の柱となった自動車関連税制について、大綱には抜本改革方針が盛り込まれた。激変する経済社会を見据えた中長期的な取り組みと言える。具体策は20年度以降になるが、電気自動車(EV)やカーシェアリングの広がりに対応し、課税の基本的な考え方を「保有」から「利用」に変更し、走行距離などに着目した制度設計になる見通しだ。

 自動車産業の在り方、環境対策、人々の意識や日常生活の変化などをどう考えるかが重要になる。大規模な作業になるが、税制の根幹である「公平、中立、簡素」から外れてはなるまい。

 税制は歳入確保の手段であるとともに、社会をあるべき姿に誘導する政策でもある。国民的な議論につなげたい。

(2018/12/18付)
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