幻の果実、愛しのポポー 県内、市民が守り育てる

2020/10/19 22:42
ポポーの実はアケビの形に似ていて香りはエキゾチック

 見た目はアケビ、口に入れると南国の香り…。全国でも流通が少なく幻の果実といわれる「ポポー」が、県内でも収穫期を迎えている。バナナやマンゴーのような甘みに、ねっとりとした食感。北米原産で明治初期に国内へ入り、県内では数十年前から庭木として普及したとみられる。徐々に廃れたものの、名前のかわいらしさや、その独特の味に魅了された人々の間でひっそりと親しまれてきた。

 ポポーは県内では直売所にたびたび出回ることがあり、苗木を取り扱う園芸店があることから庭木として栽培する人もいる。ただ甘さや形など品質が安定せず、量産化されていない。そんな中で毎年約150~200キロ生産し、インターネットで販売する上山市の果樹園経営加藤勇さん(82)によると、誰の働きかけなのかは不明だが、数十年前に栽培を奨励するために地区に2、3本ずつ苗木が配られた。しかし香りが強いため好き嫌いが分かれることもあり、地区内の栽培者は徐々に減ったとみられる。加藤さんは好奇心が旺盛だったため、サクランボやリンゴを育てる傍ら、若い頃から栽培してきたという。

 10年ほど前、島根県美郷町や茨城県日立市など木々が残っていた地区が町おこしとして加工品の販売を開始したことがあった。するとテレビ番組などで取り上げられて全国的に知名度が上がり、加藤さんの農園にもインターネットで全国から注文が来るようになった。加藤さんはさらに苗木を増やすべく試行錯誤を続けているという。

 県内にその歴史を知る人は少ないが、生産者に聞くと「親が植えた」「友人から苗木をもらった」など語る人がおり、数十年前に一時ブームがあったことがうかがわれる。だが県農業技術環境課や県立博物館によると、文献などの記録は残っていないという。

 謎多き果実に再び光を当てようとする動きもある。矢萩浩次村山市議(57)は収穫期の9~10月に「寒冷地で育つ南国フルーツ」として紹介することを検討している。自宅の畑には40~50年前に植えられた高さ5、6メートルの大木があるという。ただ「傷みが早いことが難点。栄養価が高いことなどを伝えて話題づくりしたい」と話している。

天童市のボンジュール洋菓子店が作る銘菓ポポー

お菓子、団体の名前にも

 県内では栽培だけではなく、ポポーの形や名前を有効活用している事例もある。天童市のボンジュール洋菓子店では、50年ほど前の開店当初からポポーの実をかたどった商品を販売している。果実は使用せず、シュー生地で粒あんを挟んだ。店主の村形弘一さん(67)によると、先代の故喜与司さんが、ポポーの実には黒い種がたくさんあることから着想を得たという。店の隣には数十年前に植えたポポーの大木がある。台風にも耐え、店の歴史とともに年輪を刻んでいる。

 村山市で子育て支援センターを運営するNPO法人「ポポーのひろば」は、この木に由来する。松田律子理事長によると、事務所のある楯岡地区で栽培している人がおり、2010年の設立時にその音の響きから採用した。子どもにも発音しやすく、開いた口の形がかわいらしいことなどから名付けたという。あなどれぬ魅力があるようだ。

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